有期雇用契約とは?契約社員の期間・更新・上限のルールを解説
2026年8月31日 公開 ・ 約7分で読めます
契約社員やパート・アルバイトを雇う際に必ず関わってくるのが「有期雇用契約」です。本記事では、契約期間の上限、更新のルール、無期転換ルール、雇止めのリスクまで、中小企業の採用担当者が押さえておくべき基本を整理します。
有期雇用契約とは何か 正社員との違い
有期雇用契約とは、あらかじめ契約期間の終期が定められている労働契約のことです。「契約社員」「パート社員」「アルバイト」「嘱託社員」など呼び方は会社によってさまざまですが、労働契約法上は雇用形態の名称ではなく「契約期間の定めがあるかどうか」で有期・無期が区別されます。
正社員(無期雇用)との最大の違いは、契約期間が満了すれば原則として雇用関係も終了する点です。会社にとっては需要の増減に応じて人員を調整しやすい一方、契約社員にとっては雇用の安定性が低いという特性があるため、労働契約法や労働基準法でいくつかの保護ルールが設けられています。
契約期間の上限 原則3年、例外は5年
労働基準法14条により、有期労働契約の契約期間には上限があります。原則は1回の契約につき3年以内です。ただし、高度な専門知識・技術・経験を持つ者(博士号取得者、公認会計士、弁護士など一定の資格保有者等)との契約や、満60歳以上の労働者との契約については、上限が5年に延長されます。
また、建設プロジェクトなど「一定の事業の完了に必要な期間」を定める契約は、この上限の対象外となり、事業の完了までの期間で契約できます。契約書を作成する際は、自社の契約社員がどの区分に該当するかを確認したうえで、上限を超えない契約期間を設定する必要があります。
更新の基本ルールと2024年4月からの明示義務強化
有期雇用契約は、期間満了時に会社と労働者が合意すれば更新できます。更新の有無や判断基準(業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況など)は、労働条件通知書に明示することが労働基準法施行規則で義務付けられています。曖昧なまま口頭で運用すると、後述する雇止めトラブルの原因になりやすい点に注意が必要です。
2024年4月の法改正により、有期契約の締結・更新のタイミングで「更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容」を明示することが新たに義務化されました。更新上限を新設・短縮する場合は、あらかじめ労働者に理由を説明することが求められます。契約書や労働条件通知書のフォーマットが古いままだと明示漏れになりやすいため、見直しをおすすめします。
無期転換ルール 通算5年で無期雇用への転換申込権が発生
労働契約法18条は、同一の使用者との間で有期労働契約が更新され、通算契約期間が5年を超えた場合、労働者からの申込みにより無期労働契約へ転換できると定めています。これがいわゆる「無期転換ルール」です。転換の申込みがあった場合、会社は原則として拒否できません。
通算契約期間の計算では「クーリング期間」も理解しておく必要があります。契約が終了してから次の契約までの間に一定の空白期間(多くの場合6か月以上)があると、それ以前の契約期間は通算に含まれずリセットされます。ただし空白期間前の契約期間の長さによって必要なクーリング期間は変動するため、通算期間が5年に近づいている契約社員がいる場合は、個別に確認したうえで対応方針を検討することが望まれます。
2024年4月の改正では、通算契約期間が5年を超えて無期転換申込権が発生する契約の更新時に、無期転換を申し込める旨と、無期転換後の労働条件を明示することも義務化されています。
雇止めのリスクと雇止め法理
契約期間満了に伴い契約を更新しないことを「雇止め」といいます。有期雇用契約は本来、期間満了で終了するのが原則ですが、労働契約法19条は一定の場合に雇止めを無効とする「雇止め法理」を定めています。具体的には、過去に反復して更新されており実質的に無期契約と同視できる場合や、労働者が契約の更新を期待することに合理的な理由がある場合、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く雇止めは無効とされます。
雇止めのリスクを下げるには、更新の都度、業務量や勤務評価など客観的な判断基準に基づいて契約更新の可否を検討し、その記録を残しておくことが重要です。また、厚生労働省の告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)により、3回以上更新している、または1年を超えて継続勤務している契約社員を雇止めする場合は、少なくとも契約期間満了日の30日前までに予告することが求められます。
契約社員を採用・運用する際の実務ポイント
契約社員の採用でも、母集団形成の段階から「契約期間」「更新の有無・基準」「更新上限」を求人票に明記しておくと、選考途中や内定後のミスマッチによる内定辞退を減らしやすくなります。労働条件を後出しで伝えると、応募者側の不信感につながりやすい点にも注意が必要です。
契約社員にも試用期間を設けること自体は可能ですが、有期契約の期間内に別途試用期間を置く形になるため、契約期間や更新判断との関係を就業規則・契約書上で整理しておく必要があります。時間外労働をさせる場合は、契約社員も36協定の適用対象に含まれるかを確認し、協定の範囲内で運用することが前提です。
採用後は、契約社員だからといってオンボーディングを簡略化しすぎると早期離職や更新拒否につながりやすいため、業務内容の説明や社内ルールの共有など、最低限の受け入れ体制は正社員と同様に用意しておくことが望ましいです。
この記事のまとめ
- 有期雇用契約の期間は原則3年以内、専門職や60歳以上の労働者などは5年以内が上限。
- 更新の有無・判断基準、更新上限の有無は労働条件通知書で明示することが法律上義務付けられている(2024年4月改正で明示範囲が拡大)。
- 通算契約期間が5年を超えると、労働者の申込みにより無期労働契約への転換が発生する(無期転換ルール)。
- 反復更新や更新への合理的期待がある契約社員の雇止めは、雇止め法理により無効となるリスクがあるため、客観的な判断基準と記録が重要。
- 求人段階での契約条件の明示、試用期間や36協定の適用関係の整理、受け入れ後のオンボーディングまで一貫して設計しておくと運用トラブルを防ぎやすい。