法定労働時間とは|所定労働時間との違いをわかりやすく
2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます
法定労働時間は労働基準法が定める上限(原則1日8時間・週40時間)であり、所定労働時間は会社がその範囲内で就業規則等で定める実際の労働時間である。両者の違いを理解すると、残業代計算や36協定、求人票の労働時間表記を正しく扱えるようになる。
法定労働時間とは|労働基準法が定める上限
法定労働時間とは、労働基準法32条が定める労働時間の上限であり、原則として1日8時間・1週40時間である。これは会社の規模や業種にかかわらず、労働基準法が適用されるすべての事業場に共通する国のルールであり、就業規則や労働契約で変更することはできない。
例外として、常時10人未満の労働者を使用する商業・映画演劇業(映画製作を除く)・保健衛生業・接客娯楽業などの一部業種は「特例措置対象事業場」とされ、1週44時間まで認められる場合がある。自社が該当するかどうかは、業種区分と労働者数の両方で判断する必要がある。
所定労働時間との違い|会社が決める「実際の労働時間」
所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書で会社が定める始業から終業までの労働時間から休憩時間を除いたものであり、実際に社員が働く時間の基準となる。多くの中小企業では、法定労働時間の範囲内で「9時始業・18時終業、休憩1時間、所定労働時間8時間」のように設定している。
重要なのは、所定労働時間は法定労働時間を超えて設定できない点である。所定労働時間を7時間や7時間45分に設定する会社もあるが、これは法定労働時間の範囲内であれば会社が自由に決められるためであり、法令違反にはならない。求人票や労働条件通知書に記載する「労働時間」は、この所定労働時間を指すのが一般的である。
法定内残業と法定外残業|割増賃金の分かれ目
所定労働時間を7時間に設定している会社で、社員が1時間残業して8時間ちょうど働いた場合、これは所定労働時間は超えているが法定労働時間(8時間)は超えていないため「法定内残業」となる。法定内残業は、労働基準法上は割増賃金の支払い義務がなく、通常の時給・日給分の賃金を支払えば足りる(ただし就業規則や賃金規程で独自に割増を定めている会社もある)。
一方、法定労働時間の8時間を超えて働かせた分は「法定外残業(時間外労働)」となり、労働基準法37条により25%以上の割増賃金の支払いが義務付けられる。所定労働時間と法定労働時間の差を理解していないと、法定内残業にも誤って割増賃金を払いすぎたり、逆に法定外残業分の割増計算を誤ったりするミスにつながりやすい。
時間外労働をさせるには36協定が必要
法定労働時間を超えて労働させる場合、原則として労働者の過半数代表者または労働組合との間で「時間外労働・休日労働に関する協定届」(いわゆる36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ることが法律上の要件となる。36協定を締結・届出していない状態で法定労働時間を超えて働かせると、労働基準法違反となる点に注意が必要である。
36協定を結んでいても、時間外労働には原則として月45時間・年360時間という上限があり、臨時的な特別の事情がある場合の特別条項付き36協定を締結していても、年720時間以内、単月100時間未満(休日労働含む)などの上限規制が適用される。採用担当者は、募集職種の所定労働時間だけでなく、実態として時間外労働がどの程度発生しているかも把握しておくと、求人票の残業時間欄の記載やオンボーディング時の説明で誤解を防げる。
変形労働時間制・フレックスタイム制との関係
繁忙期と閑散期の差が大きい業種では、1か月単位や1年単位の変形労働時間制を導入し、特定の週や日に法定労働時間を超える所定労働時間を設定することが認められている場合がある。この場合、対象期間を平均して1週の労働時間が法定労働時間の枠内に収まっていれば、特定の日・週に8時間・40時間を超えても直ちに時間外労働とはならない。
フレックスタイム制も同様に、清算期間全体で法定労働時間の総枠を超えなければ、日々の労働時間が変動しても割増賃金の対象とならない仕組みである。いずれの制度も、就業規則への規定や労使協定の締結など導入要件があるため、自社の働き方に合わせて社会保険労務士等に確認しながら設計することが望ましい。
中小企業の採用・労務実務での注意点
求人票や労働条件通知書には、所定労働時間を明記したうえで、想定される時間外労働の有無・目安時間も記載するのが実務上望ましい。応募者は求人票の労働時間欄を見て働き方をイメージするため、所定労働時間と実態としての残業時間にギャップがあると、入社後のミスマッチや早期離職、内定辞退の一因になりかねない。
また、パートタイマーやアルバイトであっても法定労働時間の規制は同様に適用される。雇用形態にかかわらず、1日8時間・1週40時間を超える労働には割増賃金や36協定が関わってくるため、シフト管理の段階で法定労働時間を意識した勤怠設計をしておくことが、後々の未払い残業代トラブルの防止につながる。
この記事のまとめ
- 法定労働時間は労働基準法が定める上限(原則1日8時間・週40時間)で、会社の裁量で変更できない
- 所定労働時間は会社が就業契約で定める実労働時間で、法定労働時間の範囲内でのみ設定できる
- 所定労働時間を超えても法定労働時間内なら法定内残業となり、割増賃金の支払い義務は生じない
- 法定労働時間を超えて働かせるには36協定の締結・届出と上限規制の遵守が必須
- 求人票には所定労働時間と想定残業時間の両方を明記し、入社後のミスマッチを防ぐことが望ましい