働き方改革関連法の中小企業への影響|対応チェックリスト
2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます
働き方改革関連法は中小企業にもすでに全面適用されている。時間外労働の上限規制、年5日有給取得義務、同一労働同一賃金、割増賃金率引き上げなど、対応すべき項目と実務チェックリストを整理する。
働き方改革関連法とは何か、中小企業は何を求められているか
働き方改革関連法は、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金など複数の法改正をまとめた総称で、2019年4月以降、順次施行されてきた。大企業から先行適用され、中小企業には猶予期間が設けられていた項目もあるが、2023年4月の割増賃金率引き上げをもって、主要な項目はすべて中小企業にも適用済みである。
「うちは規模が小さいから対象外」という認識のまま放置すると、労働基準監督署の是正勧告や、求人票・口コミサイトでの評判低下につながる場合がある。まずは自社がどの項目に対応済みで、どこが未着手かを棚卸しすることが出発点になる。
時間外労働の上限規制と36協定の見直し
時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間である。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間以内、休日労働を含み単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間を超えられるのは年6回までという規制がかかる。中小企業への猶予は2020年4月に終了しており、現在は大企業と同じ基準で運用する必要がある。
時間外労働を発生させるには、労使協定である36協定の締結・労働基準監督署への届出が前提となる。特別条項付き36協定を結んでいても、上限を超える運用が常態化していれば労基法違反となるため、まずは直近の時間外労働実績を確認し、上限に近い部署や個人がいないかを点検する必要がある。
年次有給休暇の年5日取得義務
年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、企業側が時季を指定するなどして年5日以上取得させる義務が2019年4月から全企業に課されている。対象は正社員に限らず、年10日以上の有給が付与される要件を満たせばパートタイマーや契約社員も含まれる。
取得状況は労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存する必要がある。取得率が低い従業員がいる場合は、期末に近づいてから慌てて休暇取得を促すのではなく、年度初めに取得計画表を作成し、上期・下期でそれぞれ確認するといった運用が実務上は安定しやすい。
同一労働同一賃金への対応(パートタイム・有期雇用労働法)
正社員と、パート・アルバイト・契約社員など有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、各種手当、福利厚生に不合理な待遇差を設けることを禁止する規定である。大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から適用されており、すでに対応期限は過ぎている。
対応にあたっては、正社員と非正規社員の職務内容・責任の範囲・配置転換の有無などを整理し、待遇差がある場合はその理由を説明できる状態にしておく必要がある。特に通勤手当、皆勤手当、食事手当のような手当類は、正社員のみに支給していると不合理な差と判断されるリスクが比較的高い項目とされている。
割増賃金率引き上げ(月60時間超の時間外労働)
月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は、大企業では2010年から50%以上とされてきたが、中小企業には適用が猶予されていた。この猶予は2023年4月に廃止され、現在は企業規模にかかわらず月60時間を超える時間外労働分の割増賃金率は50%以上となっている。
給与計算システムや就業規則の割増賃金率が旧基準(25%など)のまま更新されていないケースが見られる。給与計算ソフトの設定、就業規則・賃金規程の記載、労使協定の内容が実態と一致しているか、この機会に確認しておきたい。
実務対応チェックリスト
最低限確認しておきたい項目を整理すると次のとおりである。
・36協定は最新の様式で締結・届出済みか、時間外労働の実績が上限を超えていないか
・年次有給休暇管理簿を作成し、年5日取得できていない従業員がいないか
・正社員と非正規社員の待遇差について、説明できる合理的な理由があるか
・給与計算上の割増賃金率が月60時間超で50%以上になっているか
・就業規則・賃金規程が最新の法改正内容を反映しているか
・勤怠管理の方法(打刻・自己申告等)で実態と乖離がないか
対応の遅れが採用・定着に及ぼす影響
働き方改革関連法への対応は、労基署対応というリスク管理の側面だけでなく、採用活動そのものにも影響する。求人票に記載した労働条件と実態が乖離していれば、内定辞退やオンボーディング期の早期離脱につながりやすく、口コミサイトでの評判低下は次の母集団形成にも響く。
逆に、時間外労働の実績や有給取得率を求人票や面接で具体的に示せる企業は、応募者に安心感を与えやすい。法対応は「守り」のコストではなく、採用力を支える土台として位置づけて取り組むことが望ましい。
この記事のまとめ
- 時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間等)は中小企業にも2020年4月から適用されている
- 年10日以上有給が付与される労働者には、年5日以上取得させる義務があり管理簿の作成・保存が必要
- 同一労働同一賃金は2021年4月、割増賃金率50%への引き上げは2023年4月からすでに中小企業にも適用済み
- 36協定・就業規則・給与計算の設定が最新の法改正内容と一致しているか棚卸しが必要
- 法対応の遅れは労基署対応だけでなく、内定辞退や母集団形成など採用活動にも影響しうる