労働条件明示ルールの改正とは?就業場所・業務の変更範囲の書き方
2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます
2024年4月の労働条件明示ルール改正により、雇入れ時や有期契約の更新時に明示すべき項目が増えました。本記事では追加された明示事項の内容と、特に対応に迷いやすい「就業場所・業務の変更の範囲」の具体的な書き方を、中小企業の採用担当者向けに整理します。
2024年4月施行、労働条件明示ルールが変わった背景
2024年4月1日から、労働基準法施行規則の改正により、労働契約の締結時・有期労働契約の更新時に明示すべき労働条件の項目が追加されました。背景には、多様な働き方が広がる一方で、就業場所や業務内容が入社後にどこまで変わり得るのかが不明確なまま契約が結ばれ、後にトラブルに発展するケースが指摘されてきたことがあります。
対象は正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態を問わず、原則としてすべての労働者です。求人票の記載だけでなく、労働条件通知書や雇用契約書のフォーマット自体を見直す必要がある会社が多く、母集団形成の段階で使う求人票にも影響が及びます。
追加された明示事項は主に4つ
改正で追加された明示事項は、大きく分けて次の4つです。1つ目は全労働者が対象の「就業場所・従事すべき業務の変更の範囲」、2つ目は有期契約労働者が対象の「更新上限の有無とその内容」、3つ目と4つ目はいずれも有期契約労働者が対象の「無期転換申込機会」と「無期転換後の労働条件」です。
このうち1つ目の「変更の範囲」は雇用形態を問わず全員に関わるため、まず優先して対応する必要があります。2つ目以降は有期契約労働者を雇っている会社のみが対象ですが、パート・アルバイトを更新前提で雇用している中小企業では該当するケースが多く、見落としやすい項目です。
「就業場所・業務の変更の範囲」の具体的な書き方
「変更の範囲」とは、将来の配置転換や職務変更によって、入社時点の就業場所・業務内容がどこまで変わり得るかを事前に示すものです。書き方としては、まず「雇入れ直後の就業場所・業務内容」を明記し、続けて「変更の範囲」を別項目として記載する2段構成が一般的です。
例えば就業場所であれば「雇入れ直後:本社(〇〇市)/変更の範囲:会社の定める事業所」、業務内容であれば「雇入れ直後:営業事務/変更の範囲:会社の定める業務」といった記載が想定されます。転勤や異動を予定しない小規模事業所であれば「変更の範囲:雇入れ時と同一」と限定して明示することも可能で、実態に即して範囲を狭めるか広げるかを判断します。
曖昧な表現を避け、将来的に配置転換を行う可能性がある会社は「会社の定める事業所・業務」のように包括的な記載にしておくと、後日の異動命令とのずれを防ぎやすくなります。逆に将来的な変更を想定していないにもかかわらず包括的な記載にすると、労働者側の理解と食い違い、内定辞退や早期離職の一因になり得るため注意が必要です。
有期契約労働者に特有の3項目への対応
有期契約を更新する際は、通算契約期間または更新回数の上限の有無、上限がある場合はその内容を明示します。上限を新たに設ける、または短縮する場合には、その理由を労働者にあらかじめ説明することが求められる点も押さえておく必要があります。
また、有期契約が通算5年を超えて無期転換申込権が発生するタイミングでは、無期転換を申し込める旨と、無期転換後に適用される労働条件をあわせて明示します。試用期間の扱いや賃金・賞与の有無など、無期転換後の条件が有期契約時と異なる場合は、その差分を具体的に記載しておくと後々の認識齟齬を防げます。
労働条件通知書・雇用契約書の見直しと運用の実務ポイント
対応の第一歩は、現在使用している労働条件通知書や雇用契約書のフォーマットに、上記の明示事項が入っているかを確認することです。厚生労働省がモデル労働条件通知書を公開しており、様式を新しく作り直すよりも、既存の様式に不足項目を追加する形の見直しが現実的です。
運用面では、採用担当だけでなく現場の管理者にも「変更の範囲」の記載内容を共有し、実際の配置転換や業務変更が明示した範囲を超えないよう運用することが重要です。オンボーディングの初日に労働条件通知書を交付し、口頭でも変更の範囲について説明しておくと、入社後の認識違いを未然に防げます。
明示漏れ・記載不備のリスクと対応の優先順位
労働条件の明示は労働基準法上の義務であり、明示すべき事項を欠いた場合は是正勧告の対象となり得ます。加えて、就業場所・業務の変更範囲が不明確なまま配置転換を行うと、労働者との間で契約内容の食い違いを主張され、トラブルに発展する場合もあります。
対応の優先順位としては、まず全労働者に関わる「変更の範囲」の明示を雇用契約書のひな形に反映し、次に有期契約労働者がいる場合は更新上限・無期転換に関する3項目を追記する順が現実的です。次の契約更新のタイミングに合わせて段階的に切り替えていく方法でも、実務上は十分対応可能です。
この記事のまとめ
- 2024年4月施行の改正で、全労働者を対象に「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が義務化された。
- 有期契約労働者には「更新上限の有無」「無期転換申込機会」「無期転換後の労働条件」の明示も追加された。
- 「変更の範囲」は雇入れ直後の条件と別項目で記載し、実態に即して包括的にするか限定するかを判断する。
- 労働条件通知書・雇用契約書のフォーマット見直しと、現場管理者への周知をあわせて行うことが重要。
- 対応は全労働者向けの項目を優先し、有期契約労働者向けの3項目は契約更新のタイミングに合わせて段階的に反映するとよい。