雇止めの正しい進め方|雇止め法理と予告のルール、通知書の書き方
2026年8月31日 公開 ・ 約8分で読めます
有期雇用契約者の契約更新を見送る「雇止め」は、手順を誤ると解雇と同様に無効と判断されるリスクがある。本記事では、雇止め法理の要件、30日前予告のルール、通知書の書き方まで、実務担当者がそのまま使える手順を解説する。
雇止めとは何か|解雇との違いを整理する
雇止めとは、有期労働契約(パート・契約社員・アルバイトなど期間の定めがある雇用契約)について、契約期間の満了時に使用者が契約を更新せず終了させることをいう。解雇は契約期間の途中で会社側から一方的に契約を終わらせる行為であり、法的な位置づけが異なる。
もっとも、雇止めであっても後述する「雇止め法理」が適用される場合には、実質的に解雇と同様の規制がかかる。契約書に「更新しない」と書いてあるからといって、無条件に雇止めが認められるわけではない点をまず押さえておく必要がある。
雇止め法理とは|労働契約法19条の要件
労働契約法19条は、一定の有期契約について、使用者が更新を拒絶する(雇止めする)ことが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合には、従前と同一の労働条件で契約が更新されたものとみなす旨を定めている。これを一般に「雇止め法理」と呼ぶ。
対象となるのは、(1)有期契約が反復更新されており実質的に無期契約と同視できる場合、または(2)労働者が契約の更新を期待することについて合理的な理由がある場合のいずれかに該当するケースである。更新回数、雇用の通算期間、更新手続の実態(形式的か厳格か)、採用時や更新時の会社の説明、同種の労働者の雇止め実績などが総合的に考慮される。
つまり、契約書上は有期であっても、長年にわたり形式的な更新を繰り返してきた従業員や、上司が「長く働いてほしい」といった発言をしてきた従業員については、雇止めが解雇と同様に厳しく判断される場合がある。母集団形成の段階から採用管理を丁寧に行い、更新の実態を記録しておくことが、後のトラブル予防につながる。
雇止めの予告ルール|厚生労働省告示に基づく実務
有期労働契約の締結・更新・雇止めに関する基準(厚生労働省告示)により、契約を3回以上更新している場合、または雇入れから1年を超えて継続勤務している場合には、雇止めをしようとする際に少なくとも契約期間満了日の30日前までに予告をすることが求められる。この基準は労働基準法そのものではないが、行政指導の対象となる基準として実務上重視されている。
予告の対象とならない場合(初回契約や更新回数・勤続期間が基準に満たない場合など)であっても、トラブル防止の観点から早めに意思を伝えることが望ましい。特に試用期間中の有期契約社員であっても、更新を重ねていれば予告の対象になり得る点に注意する。
労働者から雇止めの理由について証明書の交付を求められた場合、使用者は遅滞なくこれを交付する義務がある。証明書には、契約を更新しなかった具体的な理由(契約期間満了、業務量の減少、能力不足、担当業務の終了など)を明記する必要がある。
雇止めが認められにくいケース・トラブルになりやすい場面
更新の判断基準を採用時や更新時に明示していない、あるいは実際には形式的な手続きだけで自動更新に近い運用をしてきた場合は、雇止め法理により契約更新とみなされるリスクが高まる。契約書の「更新の有無」「更新の判断基準」欄を空欄のまま運用している企業は特に注意が必要である。
業績悪化や事業縮小を理由とする雇止めは、実質的に整理解雇に近い性格を持つ場合があり、人員削減の必要性、雇止め回避の努力、選定の合理性、労働者への説明といった要素が問われることがある。無期転換ルール(労働契約法18条、通算契約期間が5年を超える有期契約労働者からの申込みにより無期契約に転換する制度)の適用を避ける目的だけで雇止めを行うと、目的が不当と評価される可能性もある。
妊娠・出産・育児休業の取得、労働組合活動、内部通報などを理由とした雇止めは、他の法令により明確に禁止されている。表向きの理由と実際の動機が食い違うと、後の紛争で不利になりやすい。
雇止め通知書の書き方と記載すべき項目
雇止め通知書には、労働者氏名、契約期間満了日、契約を更新しない旨、雇止めの理由、通知日、会社名・通知者名を明記する。理由は「契約期間満了のため」だけでなく、可能な範囲で具体的に記載しておくと、後日の証明書交付請求にも一貫した説明ができる。
通知は書面で交付し、控えを保管する。口頭のみの通知はトラブル時に「言った・言わない」の争いになりやすいため避けるべきである。手渡しが難しい場合は、内容証明郵便や、記録が残るメール・チャットツールでの送付も検討する。
通知のタイミングは前述の30日前予告ルールを踏まえ、社内スケジュールとしては契約満了の1〜2ヶ月前を目安に上長・人事で協議し、通知書の準備と業務引き継ぎ計画を並行して進めるとよい。
雇止めを行う前に企業が準備しておくべきこと
まず契約書・雇用契約更新記録を確認し、更新回数、通算契約期間、契約書の「更新の有無」「判断基準」欄の記載内容を洗い出す。これにより雇止め法理が適用されうるケースかどうかの見立てができる。
次に、雇止めの理由を具体的な事実(業務量の減少、担当業務の終了、契約更新時に明示していた基準への非該当など)で整理し、口頭説明だけに頼らず記録化しておく。能力不足を理由とする場合は、評価記録や指導記録が残っているかを確認する。
判断に迷うケースや、無期転換ルールが絡むケース、育児休業取得者など特に配慮が必要なケースについては、雇止めを実行する前に社会保険労務士や弁護士など専門家に相談することを推奨する。オンボーディング時点で更新基準を明示しておくなど、入口の段階からの予防策も併せて検討したい。
この記事のまとめ
- 雇止めは契約期間満了による契約終了だが、更新実態や期待の合理性によっては労働契約法19条の雇止め法理が適用され、解雇と同様に厳格に判断される場合がある
- 契約を3回以上更新、または雇入れから1年超継続勤務している労働者への雇止めは、原則として満了日の30日前までの予告が求められる
- 雇止め理由の証明書交付を請求された場合は遅滞なく交付する義務があり、日頃から契約更新の判断基準・記録を整備しておくことが重要
- 通知は必ず書面で行い控えを保管する。理由は具体的に記載し、口頭のみの通知は避ける
- 無期転換ルール回避のみを目的とした雇止みや、妊娠・出産・育休・組合活動を理由とする雇止めは違法と評価されるリスクが高い