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雇用契約・労働法・コンプライアンス

契約更新時の注意点|更新回数・更新上限を設ける際のリスク

2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます

契約社員の更新に回数や年数の上限を設ける企業は多いが、上限を決めるだけでは雇止めのリスクは消えない。無期転換ルールや雇止め法理との関係、契約書の明示事項、予告義務、現場運用の注意点まで、中小企業の経営者・採用担当者が押さえるべき実務ポイントを整理する。

契約更新に上限を設ける意味と法的な位置づけ

有期労働契約の更新に「通算〇年まで」「更新は最大〇回まで」といった上限を設ける企業は少なくない。人員計画を立てやすくする、雇用調整の余地を残すといった経営上の狙いがある一方で、法律上は上限を設けたからといって自動的に雇止めが自由になるわけではない点に注意が必要である。

労働契約法では、有期契約が反復更新されて実質的に無期契約と同視できる場合や、契約更新への合理的期待がある場合には、雇止めに客観的合理性と社会通念上の相当性が求められる(労働契約法第19条、いわゆる雇止め法理)。更新上限を就業規則や契約書に明記していても、実際の運用で期待を積み重ねてしまえば、上限どおりに終了できないリスクが残る。

無期転換ルールとの関係を先に整理する

有期契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者からの申込みにより無期契約へ転換できる(労働契約法第18条、いわゆる無期転換ルール)。更新回数や年数の上限は、この無期転換申込権が発生する前に契約を終了させる目的で設計されることが多い。

ただし、無期転換を避けることだけを目的に不自然な雇止めを行うと、雇止め法理や公序良俗違反の観点から争われるリスクがある。上限設定自体は違法ではないが、「なぜその回数・年数にしたのか」という合理的な説明を経営として持っておく必要がある。

更新上限を設ける際の実務上の注意点

更新上限を設ける場合は、採用募集の段階から労働条件通知書・雇用契約書に「更新上限あり」「通算契約期間は最長〇年」等を明記し、応募者・求職者が入社前に認識できるようにすることが重要である。母集団形成の段階で条件を曖昧にすると、入社後のトラブルや早期離職につながりやすい。

既に更新を重ねている契約社員に対して、途中から新たに上限を導入する場合は特に注意が要る。厚生労働省が定める「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」では、更新上限を新設・短縮する場合には、その理由をあらかじめ労働者に説明することが求められている。説明のないまま一方的に運用を変更すると、不利益変更として争われる可能性がある。

雇止め予告と契約書上の明示事項

有期労働契約を3回以上更新している、または雇入れから継続して1年を超えて雇用している労働者について雇止めをする場合、使用者は少なくとも契約期間満了の30日前までに予告を行うことが上記基準で求められている。更新上限に達したことを理由とする雇止めであっても、この予告義務は原則として及ぶ。

契約書には、更新の有無、更新の判断基準(業務量、勤務成績、会社の経営状況など)、更新上限の有無と内容を具体的に記載する。「更新することがある」といった曖昧な表現のみでは、後日の期待利益をめぐる紛争で不利に働きやすいため、判断基準を可能な限り具体的な言葉で示しておく。

試用期間・評価制度との整合性を取る

更新上限を設けた契約であっても、初回契約には試用期間を設けるケースが多い。試用期間中の評価と、更新時に見る評価基準が食い違っていると、現場の評価担当者が判断に迷い、結果として運用が形骸化する。オンボーディングの設計段階から、初回契約・更新時の評価項目を揃えておくと運用がぶれにくい。

評価制度と契約更新の判断を連動させる場合は、評価結果を記録として残しておくことも欠かせない。雇止めの合理性が問われた際、日頃の評価記録が「客観的合理性」を裏付ける材料になる。逆に記録がなければ、上限到達という形式的な理由だけでは説明が弱くなりやすい。

現場運用でよくある失敗パターン

よくある失敗は、契約書上は「更新上限あり」としながら、現場の管理者が繰り返し「次も更新するから大丈夫」といった口頭説明をしてしまうケースである。こうした発言は契約更新への合理的期待を積み上げ、後の雇止めを難しくする一因になる場合がある。現場の管理者に対して、更新に関する発言のガイドラインを共有しておくことが望ましい。

もう一つの失敗は、更新上限に達する契約社員が多く発生する時期を見落とし、代替人員の採用活動を直前になって始めることである。上限管理を人事側で一元的に台帳化し、上限到達の半年〜1年前から後任の母集団形成に着手できる体制を整えておくと、現場の混乱と属人化を避けやすい。

この記事のまとめ

  • 更新上限を設けても、更新への合理的期待が形成されていれば雇止め法理(労働契約法第19条)が及ぶ可能性がある
  • 通算5年超の更新に関わる無期転換ルール(労働契約法第18条)を踏まえ、上限回数・年数の設計理由を経営として説明できるようにしておく
  • 3回以上更新、または1年超雇用している社員の雇止めには、原則30日前までの予告が求められる
  • 既存社員への上限の新設・短縮は不利益変更に当たり得るため、事前説明を徹底する
  • 現場の口頭説明が更新期待を積み上げないよう、評価記録の整備と管理者向けガイドラインを整えておく

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よくある質問

契約更新の上限は何回までなら設定してよいですか。

法律上、更新回数そのものに一律の上限規制はない。ただし通算契約期間が5年を超える更新には無期転換ルールが関わるため、多くの企業は5年以内、または3回程度までを目安に上限を設計している。回数は自社の業務実態や人員計画に照らして合理的に説明できる範囲で決めることが重要である。

更新上限に達した場合、雇止め予告は不要ですか。

不要ではない。3回以上更新している、または雇入れから1年を超えて雇用している場合は、更新上限到達を理由とする雇止めであっても、原則として契約期間満了の30日前までに予告を行うことが厚生労働省の基準で求められている。

すでに何度も更新している社員に、途中から更新上限を導入できますか。

導入自体は可能だが、既存の契約社員に不利益が生じる変更となるため、あらかじめ理由を説明し、可能な範囲で合意形成を図ることが望ましい。説明なく一方的に運用を変更すると、後日のトラブルにつながるリスクが高まる。

更新上限を設けても無期転換を防げますか。

上限が通算5年以内に収まっていれば、制度上は無期転換申込権の発生前に契約が終了する設計にはなる。ただし、更新への合理的期待が形成されている場合は雇止め法理が及ぶ可能性があり、上限設定だけで紛争リスクをゼロにはできない点に留意が必要である。

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