有給休暇の取得率を上げる方法|中小企業の取り組み事例
2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます
有給休暇の取得率が上がらないのは、多くの場合「休んでよい仕組み」が整っていないことが原因である。本記事では中小企業でも取り組みやすい可視化・計画的付与・職場風土づくりなど、取得率向上の具体的な方法を解説する。
なぜ有給取得率が上がらないのか|中小企業に多い3つの壁
有給休暇の取得率が伸び悩む中小企業では、「人手が足りず休むと現場が回らない」「上司や同僚に気を遣って申請しづらい」「そもそも残日数を本人も管理者も把握していない」という3つの壁が重なっていることが多い。これらは個人の意識の問題というより、業務の属人化や休暇管理の仕組み不足が原因である場合が多い。
2019年の労働基準法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、企業側が年5日を時季を指定して取得させる義務がある。これを満たせていない状態が続くと、労基署からの是正指導の対象になりうるため、取得率向上は法令順守の観点でも避けて通れないテーマである。
取得率を可視化する|まずは現状把握から始める
施策を打つ前に、従業員ごとの有給残日数・取得日数・取得率を一覧化することが出発点になる。勤怎管理システムや給与計算ソフトに有給管理機能が付いている場合は、それを使って部署別・個人別の取得状況を月次で確認する体制を作るとよい。
可視化すると、特定の部署や役職に取得の偏りが集中していることが分かる場合が多い。管理職ほど取得率が低い、繁忙期のある部署だけ極端に低いといった傾向が見えれば、対策を打つ優先順位も定まる。
計画的付与制度を導入する|個人任せにしない仕組み
年5日を超える部分の有給休暇については、労使協定を結ぶことで企業が取得日をあらかじめ計画的に割り振る「計画的付与制度」を利用できる。夏季休暇や年末年始の前後に橋渡しの形で有給を組み込む、部署ごとに交代で取得日を割り振るといった運用が中小企業でも導入しやすい。
計画的付与は「本人が申請する」という心理的ハードルを取り除ける点が利点である。特に取得を遠慮しがちな職場文化がある会社では、個人の判断に委ねず会社側で取得日を決めてしまう方が実効性が高いことが多い。
取得しやすい職場風土をつくる|上司の姿勢と業務の属人化解消
制度を整えても、上司自身が有給を取らない、または部下の申請に難色を示す職場では取得率は上がりにくい。経営者・管理職がまず率先して有給を取得し、その姿勢を見せることが現場への波及効果を持つ場合が多い。
休みにくさの根本原因として、特定の担当者しか対応できない業務がある「属人化」が挙げられる。マニュアル整備や業務の複数人対応化を進め、誰か一人が休んでも業務が止まらない体制を作ることが、有給取得率向上と業務継続性の両方に効く施策になる。
半日単位・時間単位の有給を活用する
フルタイムでの1日休みだと申請しづらいという従業員には、半日単位の有給休暇や、労使協定を結んだ上での時間単位年休の導入が有効な場合がある。通院や子どもの学校行事など、まとまった休みでなくても対応できる用件は多く、選択肢を増やすことで取得のハードルが下がる。
ただし時間単位年休は年5日分が上限であり、時季指定義務の対象である年5日の消化には時間単位分は含まれない点に注意が必要である。導入時は就業規則の変更手続きと合わせて社会保険労務士に確認しておくと安心である。
取得率向上を採用・定着にもつなげる
有給取得率の高さは、求人票や採用面接で候補者が働きやすさを判断する材料の一つになっている。実際の取得率や取得しやすい制度を具体的に伝えることは、母集団形成の質を高め、入社後のミスマッチによる早期離職を防ぐことにもつながる。
オンボーディングの段階で有給の取得方法や計画的付与のルールを新入社員に説明しておくと、試用期間中から「休んでよい」という共通認識が持てる。制度があっても伝わっていなければ使われないため、周知の仕組みまでセットで設計することが重要である。
この記事のまとめ
- まずは部署別・個人別の有給取得状況を可視化し、偏りのある箇所から優先的に対策する
- 計画的付与制度を使えば、個人の申請任せにせず会社側で取得日を割り振ることができる
- 経営者・管理職が率先して有給を取得する姿勢が、現場全体の取得率に波及する
- 業務の属人化を解消し複数人対応にすることが、休みやすさと業務継続の両立につながる
- 有給取得率の高さや制度の具体性を採用時に伝えることで、母集団形成や定着率の向上にもつながる