採用計画書の書き方とテンプレート|項目と記入例つき
2026年8月31日 公開 ・ 約7分で読めます
採用計画書は、いつ・何人・どんな人を・いくらで採るかを1枚に整理する、採用活動の設計図です。本記事では、中小企業がそのまま使える項目一覧とテンプレート、記入例に加え、採用人数や予算の決め方、選考から入社後の受け入れまでの書き方を、実務の順番に沿って解説します。
採用計画書とは|目的と、中小企業に必要な理由
採用計画書とは、採用の背景・目的、募集ポジション、採用人数、時期、求める人物像、労働条件、採用手法、選考プロセス、予算、担当者の役割を一つにまとめた社内向けの文書です。応募者に見せる求人票とは別物で、採用活動全体の設計図にあたります。
中小企業では採用担当が他業務と兼任のことが多く、募集が場当たり的になりやすいのが実情です。計画を書面化しておくと、経営者と現場の認識をそろえられ、応募が来てから条件や選考基準で迷う場面を減らせます。
採用計画書は事業計画と結びつけて考えます。今回の採用が退職者の欠員補充なのか、事業拡大に伴う増員なのかで、必要な人数も予算も変わります。売上計画や退職の見込みと照らし合わせ、そもそも採用が最適な打ち手かも含めて整理します。
採用計画書に必ず入れる基本項目一覧
最低限そろえたい項目は次の11点です。(1)採用の背景・目的、(2)募集ポジションと職務内容、(3)採用人数、(4)採用時期・入社希望日、(5)求める人物像(必須要件・歓迎要件)、(6)雇用形態・労働条件、(7)採用手法・募集媒体、(8)選考プロセスと評価基準、(9)採用予算、(10)採用担当と役割分担、(11)KPIと振り返り。
このうち労働条件は、雇用形態・就業場所・業務内容・労働時間・休日・賃金・試用期間などを含みます。実際の募集・採用時には労働条件明示のルールに沿って応募者へ示す必要があるため、計画段階から実態と食い違わない内容で書いておきます。
項目は多く見えますが、一度ひな形を作れば次回以降は前回の計画書を上書きして使えます。まずは空欄でよいので全項目を用意し、決まっていない箇所を可視化することが、抜け漏れを防ぐ第一歩になります。
そのまま使えるテンプレート(記入例つき)
以下は「営業事務(正社員)1名」を想定した記入例です。実在の企業ではなく書き方の見本として読んでください。●背景・目的:受注増に伴う増員/既存メンバーの残業削減。●職務内容:受発注入力、見積書作成、電話・来客対応。●採用人数:1名。●入社希望日:計画月から起算して募集期間と選考期間を確保した目標日。
●雇用形態・労働条件:正社員、試用期間は一般に3〜6か月の範囲で設定、就業時間・休日・賃金は自社の就業規則と賃金表に基づき記載。時間外労働が想定される場合は36協定の締結・届出が前提。●想定年収:地域相場と社内の等級を踏まえた範囲で記載。
●求める人物像:必須要件(PC基本操作、事務経験の有無など)と歓迎要件(業界経験、簿記など)を分けて記載。●採用手法:自社採用サイト+ハローワーク+リファラル採用。●選考プロセス:書類選考→一次面接→適性検査→最終面接。●採用予算:媒体費・紹介手数料・担当者工数・入社後の教育費を合算。●担当:一次面接は現場責任者、最終は経営者。●KPI:応募数、書類通過率、内定承諾率、採用単価。この骨子をそのまま自社の値に置き換えれば1枚の採用計画書になります。
採用人数・時期・予算の決め方
人数は「増やしたいから」ではなく、事業計画・想定退職者・現状の欠員から逆算します。増員の場合は、その人の稼働でどれだけ売上や工数削減が見込めるか、投資回収の見立ても一言添えておくと経営判断がぶれません。
時期は入社希望日から逆算して組みます。募集期間、書類選考、複数回の面接、内定通知、入社準備までを並べると、採用には一般に数週間から数か月かかることが見えてきます。繁忙期に募集開始が間に合わないといった事態を避けられます。
予算は総額だけでなく1人あたりの採用単価で管理します。求人媒体費、人材紹介の手数料(成功報酬型が一般的で、理論年収の一定割合で設定されることが多い)、担当者の工数、入社後の教育費までを含めて見積もると、手法ごとの費用対効果を比較できます。
求める人物像と募集要件の書き方
求める人物像は、必須要件(MUST)と歓迎要件(WANT)を必ず分けます。両方を1つの箱に入れて条件を盛り込みすぎると、母集団形成の段階で応募が集まらなくなります。実際に業務を回すうえで欠かせない条件だけを必須に残すのがコツです。
要件は「明るい人」のような主観語ではなく、業務で観察できる行動や経験に落とし込みます。たとえば「電話対応の経験」「複数案件を並行して段取りできる」のように書くと、面接での評価基準ともつながり、担当者による判断のばらつきを抑えられます。
募集要件の表現には法的な制約があります。募集・採用時の年齢制限は労働施策総合推進法により原則として禁止されており(一定の例外事由があります)、性別を理由とする募集・採用の差別的取扱いも男女雇用機会均等法により原則として禁止されています。求人票や求人原稿の文言はこれらに反しないか確認します。
選考プロセスと入社後の受け入れまで設計する
選考プロセスは、書類選考・面接回数・適性検査の有無・意思決定者を事前に決めておきます。誰が何を評価するかを面接ごとに分担しておくと、同じ質問の重複や、逆に確認漏れが起きにくくなります。評価シートを用意すると記録も残り、次回の改善に使えます。
中小企業では選考のスピードと連絡のこまめさが内定辞退の抑制に効きます。面接から結果連絡までの目安日数、条件提示の内容、候補者からの質問対応などを計画に含めておくと、他社と競合したときに対応が遅れて機会を逃すのを防げます。
採用計画書は内定で終わりにせず、入社後の受け入れ(オンボーディング)まで書きます。初日から数週間の育成の流れ、担当メンター、試用期間中に見る項目を決めておくと、早期離職を減らしやすくなります。なお試用期間中であっても、解雇には合理的な理由が必要とされる点には注意が必要です。
運用・振り返りのポイント(KPIと更新頻度)
採用計画書は作って終わりではなく、KPIで進捗を見ながら運用します。応募数、書類通過率、面接通過率、内定承諾率、採用単価、入社後の定着率などを段階ごとに数値化すると、どこで候補者が離脱しているかが分かり、手を打つ場所が具体的になります。
見直しは、事業年度や半期・四半期の節目、あるいは採用が計画どおり進まないと感じたタイミングで行います。うまくいった募集媒体や、応募につながった要件の書き方は記録として残し、次回の計画にそのまま引き継ぎます。
一度の採用で得た知見を社内に蓄積しておくと、次回はゼロから作らずに済みます。計画書・求人原稿・面接評価・採用単価を一箇所にまとめておくことが、属人化の解消と、回を重ねるごとの採用力の底上げにつながります。
この記事のまとめ
- 採用計画書は「いつ・何人・どんな人を・いくらで・どう選ぶか」を1枚にまとめる社内向けの設計図で、応募者向けの求人票とは役割が異なる。
- 基本項目は背景・目的/ポジション/人数/時期/人物像/労働条件/手法/選考/予算/担当/KPIの11点をそろえる。
- 人数は事業計画と退職予測から逆算し、時期は入社希望日から逆算、予算は1人あたりの採用単価で管理する。
- 求める人物像は必須要件と歓迎要件を分けて書き、年齢・性別を理由とする募集制限には法的な制約がある点に注意する。
- 内定後のオンボーディングまで設計し、KPIで振り返って、うまくいった手法や要件を次回の計画に引き継ぐ。