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雇用契約・労働法・コンプライアンス

試用期間中の解雇は違法?本採用拒否が認められる条件と手順

2026年8月31日 公開 ・ 約7分で読めます

試用期間中の解雇(本採用拒否)は「自由に行える」わけではなく、通常の解雇と同様に解雇権濫用法理が及ぶ。本記事では認められる条件、14日ルールを含む解雇予告の扱い、実務での判断・通知手順を整理する。

試用期間中でも「解雇」に変わりはない――まず押さえるべき法的な位置づけ

試用期間は、労働契約の効力そのものは発生している状態で、企業が労働者の適性を見極めるための期間である。多くの就業規則では、試用期間中または期間満了時に本採用を見送ることを「本採用拒否」と呼ぶが、法的にはこれも解雇の一種として扱われる。

つまり「試用期間中だから自由に辞めてもらえる」という理解は誤りである。労働契約法16条の解雇権濫用法理が及び、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる点は、通常の解雇と変わらない。

唯一の違いは、判例上、本採用拒否には通常の解雇よりもやや広い範囲での解雇の自由が認められている点である。ただしこれは「基準が緩い」だけであり、「基準がない」わけではない。

本採用拒否が認められやすい理由・認められにくい理由

認められやすいとされる理由には、経歴詐称の発覚、無断欠勤の繰り返し、業務指示への著しい不服従、採用選考時には把握できなかった能力不足や適性欠如などがある。いずれも「採用時点では判断できず、実際に働かせてみて初めて判明した」という要素が重視される。

逆に認められにくいのは、抽象的な「協調性がない」「雰囲気に合わない」といった主観的評価のみを根拠にするケースや、指導・注意を一度もせずに能力不足と判断するケースである。企業側が改善の機会を与えていない場合、相当性を欠くと判断される場合がある。

母集団形成の段階でミスマッチを減らす採用選考を行っていたとしても、実際の業務適性は試用期間で初めて見えることがある。その意味で試用期間は「見極めの期間」であると同時に、企業側に「指導し記録する期間」としての役割も課されていると理解しておくとよい。

14日を境に変わる解雇予告のルール

試用期間中の解雇でも、原則として労働基準法20条に基づく解雇予告(30日前予告、または平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払い)が必要である。ただし、雇入れから14日以内の解雇については、労働基準法21条により解雇予告の適用が除外される。

この「14日以内」は暦日でカウントされ、入社日を含めて数える点に注意が必要である。14日を過ぎてから本採用拒否を行う場合は、通常の解雇と同様に予告または予告手当の支払いが必要になる。

なお解雇予告の要否と、解雇そのものの有効・無効は別の問題である。14日以内であっても、解雇理由に合理性・相当性がなければ、解雇無効やのちの労働審判・訴訟のリスクは残る。

本採用拒否までに踏むべき実務手順

第一に、就業規則に試用期間の設定と本採用拒否の要件を明記しておくことが前提になる。試用期間の長さ(一般に3か月〜6か月程度とする例が多い)、延長の可否、本採用拒否の判断基準を規定しておく。

第二に、問題行動や能力不足が見られた時点で、口頭注意だけで終わらせず、指導内容と本人の反応を記録に残す。日時、指摘した内容、改善指導の有無、その後の変化を簡潔にメモしておくだけでも、後日の紛争時に相当性を裏付ける資料になる。

第三に、本採用拒否を決定する前に、可能であれば配置転換や業務内容の見直しなど、他の選択肢を検討した経緯も残しておく。改善の機会を与えたにもかかわらず改善が見られなかった、という流れが説明できる状態が望ましい。

第四に、通知は書面で行い、解雇理由を具体的に記載する。「能力不足のため」といった抽象的な表現ではなく、どの業務で、どのような問題が繰り返し発生したかを事実ベースで記す。

試用期間の延長という選択肢

判断に迷う場合、就業規則に延長規定があることを前提に、試用期間そのものを延長する選択肢もある。本採用拒否は労働者の不利益が大きい判断であるため、いきなり結論を出す前に、追加の見極め期間を設けることが相当性の観点から評価される場合がある。

ただし延長は無制限に行えるものではない。合理的な理由なく延長を繰り返すと、それ自体が権利濫用と判断されるリスクがある。延長する場合は理由と期間を本人に明示し、書面で通知しておくことが望ましい。

退職勧奨という選択肢と進め方の注意点

解雇という強い手段を取る前に、本人との話し合いにより自主的な退職を促す退職勧奨を検討する企業も多い。合意退職であれば解雇に関する紛争リスクを大きく下げられる利点がある。

一方で、退職勧奨は「勧める」行為にとどめる必要がある。執拗な面談の繰り返しや威圧的な言動、退職に応じなければ不利益を与えるといった示唆は、違法な退職強要とみなされ、かえって紛争を招く。回数や場所、同席者を含め、記録に残る形で穏当に進めることが重要である。

本人が退職に応じない場合は、退職勧奨から解雇へ切り替える判断が必要になるが、その際も第4章の手順(記録・書面・具体的理由)を踏むことに変わりはない。

この記事のまとめ

  • 試用期間中の本採用拒否も法的には解雇であり、解雇権濫用法理(労働契約法16条)が適用される
  • 認められやすいのは経歴詐称や採用時に把握できなかった能力不足など「働かせてみて分かった」事情
  • 雇入れ14日を境に解雇予告の要否が変わるが、解雇理由の合理性・相当性は別問題として常に問われる
  • 指導内容・改善状況の記録を残し、通知は具体的な事実に基づく書面で行うことがトラブル予防になる
  • 解雇に先立ち、試用期間の延長や退職勧奨といった代替手段を検討する余地もある

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よくある質問

試用期間中なら理由を問わず解雇できますか?

できません。試用期間中の本採用拒否も法的には解雇にあたり、労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用されます。判例上、通常の解雇よりやや広い解雇の自由は認められていますが、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要な点は変わりません。

試用期間中の解雇でも解雇予告は必要ですか?

雇入れから14日を超えている場合は、通常の解雇と同様に30日前の解雇予告、または解雇予告手当の支払いが原則として必要です。14日以内の解雇は労働基準法21条により解雇予告の適用が除外されますが、解雇理由自体の合理性・相当性は別途問われます。

能力不足を理由に本採用拒否できますか?

できる場合がありますが、単なる主観的評価では不十分とされることが多いです。具体的な問題行動・業務上の支障、それに対する指導の記録、改善が見られなかった経過などを事実ベースで示せることが重要です。

解雇と退職勧奨、どちらを先に検討すべきですか?

一般的には、紛争リスクを抑えられる退職勧奨を先に検討し、本人が応じない場合に解雇を検討する進め方が実務上多く見られます。ただし退職勧奨は威圧的にならないよう進め方に注意が必要です。

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