解雇予告手当とは?計算方法と即日解雇する場合の注意点
2026年8月31日 公開 ・ 約7分で読めます
解雇予告手当は、労働者を30日前に予告せず解雇する際に支払う手当で、平均賃金の計算方法を誤ると未払いトラブルに直結する。本記事では計算式の具体例、即日解雇時の実務、除外認定や試用期間中の扱いまで、中小企業の経営者・採用担当者が押さえるべき実務ポイントを整理する。
解雇予告手当とは何か
解雇予告手当とは、使用者が労働者を解雇する際に、解雇の30日以上前に予告をしなかった場合に支払う手当である。労働基準法第20条により、使用者は労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前に予告するか、予告に代えて30日分以上の平均賃金を支払うことが義務付けられている。
予告と手当は組み合わせることもできる。たとえば解雇の10日前に予告した場合は、不足する20日分の平均賃金を支払えば足りる。人手不足や業績悪化を理由に急に人員整理を検討する経営者は少なくないが、この予告義務を軽視すると後日の労働トラブルや未払い賃金請求に発展しやすい。
解雇予告手当の計算方法
解雇予告手当は「平均賃金×不足日数」で算出する。平均賃金は労働基準法第12条に基づき、解雇を言い渡した日(算定事由発生日)以前3ヶ月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数(暦日数)で割って求める。賞与など臨時に支払われた賃金は原則として含めない。
具体例として、直近3ヶ月の賃金総額が90万円、暦日数が90日の場合、平均賃金は1万円となる。即日解雇であれば30日分、つまり30万円が解雇予告手当の目安になる。日給制や時給制の労働者については、最低保障額(賃金総額を実労働日数で割った額の60%)との比較が必要になる場合があるため、給与計算担当者は就業規則と賃金台帳を突き合わせて確認しておきたい。
即日解雇する場合の注意点
予告期間を置かずに即日解雇する場合は、解雇予告手当を解雇と同時に、または解雇後遅滞なく全額支払う必要がある。支払いが遅れたり分割払いにしたりすると、労働基準監督署への申告や未払い賃金請求の対象になり得るため、支払いの原資と手続きを事前に確保しておくことが望ましい。
また、即日解雇は懲戒解雇や整理解雇など事由を問わず、解雇そのものの有効性とは別問題である。解雇予告手当を支払ったからといって解雇理由の正当性が担保されるわけではなく、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇は、手当の支払い有無にかかわらず無効と判断される場合がある点に留意したい。
解雇予告手当が不要になるケース
天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能になった場合や、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、所轄労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けることで、予告および予告手当の支払いを省略できる(労働基準法第20条第3項、第19条第2項)。ただし認定は自動的に得られるものではなく、事実関係を示す資料を添えて申請し、労働基準監督署の審査を経る必要がある。
「重大な就業規則違反があったから即日解雇して手当も不要」と自己判断してしまう経営者もいるが、認定を受けずに手当を支払わなかった場合は、後から未払いと指摘されるリスクが残る。除外事由に該当すると考えられる場合でも、判断に迷うときは社会保険労務士や労働基準監督署に事前相談することが実務上のリスク回避になる。
試用期間中の解雇と解雇予告手当の関係
試用期間中の労働者であっても、原則として解雇予告または解雇予告手当の対象になる。例外は、雇い入れから14日以内に解雇する場合のみで、この期間内であれば予告義務は課されない。母集団形成の段階でミスマッチを避けきれず、試用期間中に採用を見直す判断自体は経営上あり得るが、14日を超えて在籍した労働者を解雇する場合は通常の解雇予告手続きが必要になる点を採用担当者は押さえておきたい。
日々雇い入れられる者(1ヶ月を超えて引き続き使用される場合を除く)や、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者なども適用除外の対象になり得るが、実際の雇用実態が契約形式と異なる場合は除外が認められないこともある。契約形態だけで判断せず、実際の雇用継続期間を確認することが望ましい。
解雇予告手当を巡るトラブルを防ぐ実務ポイント
解雇を検討する際は、就業規則の解雇事由に該当するか、懲戒処分に至る手続きを踏んでいるかをまず整理し、その上で予告と手当のどちらで対応するかを決める。解雇通知書には解雇理由と解雇日、予告手当を支払う場合はその金額と支払日を明記し、労働者との認識のずれを残さないようにする。
解雇は退職勧奨や合意退職とは異なり、労働者の同意を要しない一方的な意思表示であるため、後の紛争リスクが最も高い労務対応の一つである。解雇予告手当の支払いだけで手続きが完結したと考えず、解雇理由の妥当性、証拠の整理、必要に応じた弁護士・社会保険労務士への相談を組み合わせて進めることが、中小企業にとって現実的なリスク管理になる。
この記事のまとめ
- 解雇予告手当は「平均賃金×不足日数」で計算し、平均賃金は解雇日以前3ヶ月の賃金総額を暦日数で割って求める
- 即日解雇する場合は30日分の平均賃金を解雇と同時または遅滞なく全額支払う必要がある
- 天災事変や労働者の責に帰すべき事由がある場合でも、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けなければ手当の支払いは省略できない
- 試用期間中でも雇い入れから14日を超えた労働者は原則として予告または手当の対象になる
- 解雇予告手当の支払いは解雇理由の正当性を担保しない点を理解し、就業規則や証拠整理と合わせて対応する