本文へスキップ
労務・勤怠・休暇・多様な働き方

遅刻・早退・欠勤の給与控除|正しい計算方法とルール

2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます

遅刻・早退・欠勤があった場合、給与からどこまで控除できるのか迷う経営者・採用担当者は多い。本記事ではノーワークノーペイの原則、控除額の計算方法、減給の制裁との違い、就業規則への明記方法までを実務目線で解説する。

遅刻・早退・欠勤の控除は「ノーワークノーペイの原則」が土台

遅刻・早退・欠勤の給与控除は、労働していない時間分の賃金を支払わないという「ノーワークノーペイの原則」に基づいている。労働基準法に直接の規定はないが、労働契約は労働の提供と賃金の支払いを対価関係とするものであり、判例・実務上も広く認められた考え方である。

したがって、遅刻・早退・欠勤による不就労時間分を控除すること自体は、労働基準法24条の賃金全額払いの原則に反しない。問題になりやすいのは、実際の不就労時間を超えて機械的にペナルティ的な金額を差し引く運用のほうである。

控除額の基本計算式と時間単価の出し方

月給制の場合、一般には「1時間あたりの賃金額×不就労時間数」で控除額を算出する。1時間あたりの賃金額は、月給を年間所定労働時間の月平均で割って求める方法が広く用いられ、就業規則や賃金規程に算出方法をあらかじめ明記しておくことが望ましい。

例えば月給30万円、月平均所定労働時間160時間の場合、時間単価は1,875円となる。1時間の遅刻であれば1,875円を、半日の早退であれば所定労働時間の半分に相当する時間数を掛けた金額を控除する、という形になる。

欠勤についても同様に、欠勤した日の所定労働時間分を上記の時間単価で換算して控除するのが一般的である。日給制・時給制の場合は、そもそも働いた時間分のみを支払う仕組みのため、別途の控除計算は不要なことが多い。

「不就労控除」と「減給の制裁」を混同しない

実務でよく混同されるのが、不就労分を差し引く「控除」と、懲戒処分としての「減給の制裁」である。単に働かなかった時間分を差し引く不就労控除は、就労していない事実に対応した賃金の不発生であり、懲戒処分ではない。

一方、遅刻や欠勤を理由に不就労時間を超える金額を罰則的に差し引く場合は、労働基準法91条の「減給の制裁」に該当する可能性がある。同条では、1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、複数回にわたる場合の総額も一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないと定められている。

「遅刻1回につき一律5,000円控除」のような固定額のペナルティは、実際の不就労時間との対応関係がなく、減給の制裁として労基法91条の上限規制を受ける点に注意が必要である。

就業規則・賃金規程への明記が必須

遅刻・早退・欠勤時の控除方法は、賃金の計算方法に関わる事項として就業規則(賃金規程)に定めておく必要がある。控除の対象、時間単価の算出方法、端数処理のルールなどを明文化しておくことで、労使双方の認識のズレやトラブルを防げる。

特に減給の制裁を就業規則に定める場合は、労働基準法89条の相対的必要記載事項にあたるため、制裁の種類や程度を具体的に記載し、労基法91条の上限を超えない内容にしておくことが求められる。就業規則の変更は労働者代表の意見聴取や労働基準監督署への届出も必要になる場合がある点も押さえておきたい。

端数処理の取り扱いで不利益を積み重ねない

遅刻・早退の時間は、原則として実際の不就労時間を1分単位で正確に把握し、その時間分のみを控除するのが基本である。事務処理の簡便化のために一定単位で端数処理を行う運用も見られるが、常に労働者に不利益な方向(切り上げ)にのみ丸めるような取り扱いは、実質的にノーワークノーペイの範囲を超えた控除となり問題視されやすい。

例えば「10分未満の遅刻でも一律30分の遅刻扱いとする」といった運用は、実態との乖離が大きくなるほどトラブルの火種になりやすい。勤怠システムでの分単位管理と、控除計算ロジックの整合性を定期的に確認しておくとよい。

現場でのトラブルを防ぐための運用ポイント

遅刻・早退・欠勤控除は金額として給与明細に表れるため、従業員の納得感を得られないと不満や不信につながりやすい。控除の根拠となる勤怠記録(打刻時刻、遅刻・早退・欠勤の理由)を客観的に残せる勤怠管理の仕組みを整えておくことが、後々の説明責任を果たすうえでも重要になる。

また、有給休暇の取得によって欠勤扱いを回避できる場合があること、遅刻・早退の常習化が懲戒処分や評価に影響しうることなど、控除のルールとあわせて評価・懲戒の基準も採用時・オンボーディング時に説明しておくと、入社後の認識違いを減らせる。

この記事のまとめ

  • 遅刻・早退・欠勤の控除は「ノーワークノーペイの原則」に基づき、不就労時間分を差し引く限り賃金全額払いの原則には反しない
  • 控除額は「時間単価×不就労時間」で計算するのが一般的で、時間単価の算出方法を就業規則に明記しておく
  • 不就労時間を超える固定額のペナルティは「減給の制裁」に該当し、労働基準法91条の上限規制を受ける
  • 端数処理は常に労働者不利益な方向に丸めず、実際の勤怠記録に基づいた正確な計算を行う
  • 控除ルールは就業規則に明文化し、採用・オンボーディング時に説明して認識のズレを防ぐ

求人を探す

中小企業の求人を無料で検索・応募できます。

求人を検索する エリアから探す 採用用語集

よくある質問

遅刻・早退・欠勤の控除に法律上の上限はありますか。

実際の不就労時間分を差し引く「不就労控除」自体には上限規制はない。ただし、不就労時間を超えて罰則的に差し引く場合は「減給の制裁」に該当し、労働基準法91条により1回の額は平均賃金1日分の半額まで、総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1までという上限が適用される。

有給休暇を使えば遅刻・早退・欠勤の控除は避けられますか。

会社の制度上、半日単位や時間単位の年次有給休暇を導入している場合は、遅刻・早退の時間に有給休暇を充当し控除を回避できることがある。ただし時間単位年休の導入には労使協定の締結が必要であり、制度がない会社では欠勤日全体への有給休暇の充当のみ可能となる場合が一般的である。

遅刻を繰り返す従業員に一律のペナルティ額を設定してもよいですか。

実際の不就労時間との対応関係がない固定額のペナルティは減給の制裁とみなされ、労働基準法91条の上限を超えると違法になるおそれがある。回数や金額を定める場合は、上限規制の範囲内であることを確認し、就業規則に具体的に明記しておく必要がある。

月給制と時給制で控除の考え方は違いますか。

時給制・日給制はそもそも実労働時間分のみ賃金が発生する仕組みのため、別途の控除計算は基本的に不要である。月給制は所定労働時間分の賃金があらかじめ確定して支払われるため、不就労分を時間単価に換算して差し引く計算が必要になる。

関連するコラム

育児休業給付金はいくらもらえる?計算方法と支給期間 有給休暇は入社何ヶ月から取れる?付与のタイミングを解説 年間休日の平均と決め方|中小企業の求人票での書き方 深夜労働・深夜割増のルール|対象時間と計算方法 アルバイト・パートの労働時間管理|シフトと勤怠の注意点 週40時間・1日8時間の原則とは|例外と特例措置を解説
労務・勤怠・休暇・多様な働き方の記事一覧