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同一労働同一賃金とは|中小企業が見直すべき待遇差

2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます

同一労働同一賃金は、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止する考え方です。中小企業も2021年4月から適用対象になっており、基本給・賞与・手当・福利厚生のどこを見直すべきか、実務の進め方を解説します。

同一労働同一賃金とは何か

同一労働同一賃金とは、同じ企業内で働く正社員(無期雇用フルタイム労働者)と、パート・有期雇用労働者・派遣労働者との間で、不合理な待遇差を設けてはならないという考え方です。法律上は「パートタイム・有期雇用労働法」(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)と「労働者派遣法」に根拠があり、大企業には2020年4月、中小企業には2021年4月から適用されています。

「同一の仕事なら同一の賃金を払う」という単純な数式ではなく、職務内容・配置転換の範囲・その他の事情を踏まえて、待遇差が不合理でないかを判断する仕組みです。名称にとらわれず、実際の仕事内容や責任の重さで判断する点が実務上のポイントになります。

均衡待遇と均等待遇の違いを整理する

同一労働同一賃金には「均衡待遇」と「均等待遇」という2つの規律があります。均衡待遇は、職務内容・人材活用の仕組み(転勤や配置転換の有無)・その他の事情を考慮し、待遇差が不合理であってはならないという規律です。均等待遇は、職務内容と人材活用の仕組みが正社員と完全に同一である場合、待遇について差別的取扱いを禁止する、より厳格な規律です。

中小企業の現場では均等待遇が問題になるケースは比較的少なく、均衡待遇、つまり「仕事内容にある程度の違いがある中で、待遇差がどこまで説明できるか」が実務上の論点になることが多いといえます。

見直しの対象になりやすい待遇項目

基本給は、能力・経験・成果・勤続年数など、正社員の賃金決定要素と同様の要素をパート・有期雇用労働者にも反映しているかが問われます。賞与についても、会社業績への貢献に応じて支給する趣旨であれば、貢献度に応じてパート・有期雇用労働者にも支給する必要があるとされています。

通勤手当・食事手当・皆勤手当などの諸手当は、正社員にのみ支給し非正規社員には支給しないという運用が、不合理な待遇差として指摘されやすい典型例です。慶弔休暇や休憩室・更衣室の利用といった福利厚生施設、安全管理に関する措置についても、同一の事業所で働くのであれば同一の取扱いが求められます。

教育訓練についても、現在の職務遂行に必要な内容であれば、正社員と同様にパート・有期雇用労働者にも実施する必要があるとされています。「非正規だから研修は不要」という運用は見直しの対象になり得ます。

待遇差の説明義務への対応

パート・有期雇用労働法では、事業主は、パート・有期雇用労働者から求めがあった場合、正社員との待遇差の内容や理由を説明する義務を負います。説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることも禁止されています。

説明を求められてから慌てて理由を考えるのではなく、あらかじめ各手当・賞与・基本給の支給趣旨を文書化し、正社員と非正規社員でなぜ差があるのか(または差がないのか)を整理しておくことが実務上の備えになります。就業規則や賃金規程の条文だけでなく、運用の実態と整合しているかも確認する必要があります。

中小企業が進める見直しの手順

まず、正社員とパート・有期雇用労働者について、職務内容(業務の内容・責任の程度)と、配置転換や転勤の有無・範囲(人材活用の仕組み)を洗い出し、両者の違いを一覧化します。次に、基本給・賞与・各種手当・福利厚生・教育訓練のそれぞれについて、支給の有無と支給基準を比較します。

比較の結果、待遇差がある項目については、その差が職務内容や人材活用の仕組みの違いで説明できるかを検討します。説明が難しい待遇差については、支給対象の拡大、支給基準の見直し、あるいは正社員側の待遇の整理まで含めて対応方針を検討します。是正には人件費への影響が伴うため、優先順位をつけて段階的に進める判断も現実的です。

見直しを行う際は、就業規則・賃金規程・パート就業規則などの改定が必要になる場合があります。改定にあたっては、労働者の意見聴取や説明の手続きも含めて進めることが望ましいといえます。

母集団形成・定着への影響も踏まえて考える

同一労働同一賃金への対応は、法令遵守の観点だけでなく、採用の母集団形成や既存社員の定着にも影響します。待遇差が不透明なままだと、入社後のミスマッチや不満につながり、早期離職の一因になる場合があります。求人票や面接、オンボーディングの場面で、待遇の考え方を説明できる状態にしておくことは、応募者の納得感を高めることにもつながります。

一方で、待遇の見直しは人件費や既存社員とのバランスに直結するため、社会保険労務士など専門家に相談しながら進めることが望ましい領域です。自社の判断だけで進めず、必要に応じて外部の確認を受けることをおすすめします。

この記事のまとめ

  • 同一労働同一賃金は、正社員と非正規社員の不合理な待遇差を禁止する考え方で、中小企業も2021年4月から適用対象である
  • 判断は均衡待遇(不合理な差の禁止)と均等待遇(差別的取扱いの禁止)の2つの規律で行われる
  • 基本給・賞与・諸手当・福利厚生・教育訓練は見直しの対象になりやすい項目である
  • パート・有期雇用労働者から求めがあれば待遇差の説明義務があるため、支給趣旨をあらかじめ文書化しておくことが望ましい
  • 待遇の見直しは採用の母集団形成や定着にも影響するため、専門家に相談しながら計画的に進めることが望ましい

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よくある質問

同一労働同一賃金はいつから中小企業にも適用されていますか。

大企業には2020年4月、中小企業には2021年4月からパート・有期雇用労働法が適用されており、すでにすべての企業が対象になっています。

正社員とパート社員で仕事内容が少しでも違えば、待遇差をつけてよいのですか。

職務内容や人材活用の仕組みの違いに応じた合理的な範囲であれば待遇差自体は否定されません。ただし、その違いが待遇差の理由として説明できるかどうかが判断のポイントになります。名称や雇用形態だけを理由にした差は不合理とされる場合があります。

待遇差について説明を求められたら、必ず応じる必要がありますか。

パート・有期雇用労働法上、事業主にはパート・有期雇用労働者から求めがあった場合の説明義務があります。あらかじめ待遇差の理由を整理しておくことで、求められた際にも一貫した説明ができます。

見直しにはどこから着手すればよいですか。

まず正社員と非正規社員の職務内容・人材活用の仕組みの違いを一覧化し、次に基本給・賞与・諸手当・福利厚生ごとに支給基準を比較するところから始めるのが実務的です。是正が必要な項目が多い場合は、影響の大きいものから優先順位をつけて進めることをおすすめします。

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