離職の原因分析のやり方|退職理由を集めて対策につなげる手順
2026年8月31日 公開 ・ 約7分で読めます
離職の原因分析は、退職面談やアンケートで理由を集めるだけでは終わらない。理由を分類・定量化し、なぜなぜ分析で本当の原因を絞り込み、改善策に落として効果を検証するまでの一連の手順を、中小企業でも運用できる形で解説する。
退職者アンケートと退職面談で本音を集める
離職の原因分析は、まず退職理由を「本人の言葉」で集めることから始まる。退職面談は上司ではなく人事や第三者が実施し、次の転職先や人間関係への配慮から本音が出にくいことを前提に、匿名で回答できる退職者アンケートを併用すると回答の精度が上がる。
質問項目は「退職を考え始めた時期」「決め手になった出来事」「改善されていれば残ったか」の3点を軸にすると、表面的な理由の奥にある要因まで拾いやすい。在職中の1on1やエンゲージメントサーベイの結果と突き合わせると、退職面談だけでは見えない傾向も把握できる。
退職理由を分類して定量化する
集めた退職理由は、給与・評価、人間関係、業務量・残業、成長機会、キャリアの見通し、労働条件(勤務地・シフト)などのカテゴリーに分類し、件数と割合を集計する。分類軸は最初から厳密に作り込まず、実際に出てきた理由を見ながら中小企業でも運用できる程度の粒度(5〜8分類程度)に調整するとよい。
四半期または半期ごとに集計し、部署別・在籍年数別・雇用形態別にクロス集計すると、「入社1年未満の離職が多い」「特定部署に偏っている」といった傾向が見えてくる。件数が少ない企業では過去2〜3年分をまとめて見ることで、単発の事象と構造的な問題を区別しやすくなる。
本当の原因を絞り込む(なぜなぜ分析の使い方)
「人間関係が理由」という回答が多いだけでは対策が立てられない。なぜその人間関係が悪化したのか、誰との関係か、いつから兆候があったかを「なぜ」を3〜5回程度繰り返して掘り下げると、表面的な理由の背後にある構造的な原因(業務量の偏りによる余裕のなさ、評価制度への不満が人間関係の悪化として表面化しているなど)に近づける。
この段階で、個人の資質の問題として片付けず、仕組みや制度に起因する部分がないかを必ず確認する。特定の管理職の下でだけ離職が続いている場合は、マネジメント側の課題である可能性を事実として記録し、憶測で断定しない姿勢を保つ。
在職者データと比較し離職の予兆をつかむ
退職者のデータだけを見ていると、既に手遅れになった事例の分析で終わってしまう。在職者を対象にした定期的なエンゲージメントサーベイや1on1の記録と退職者の傾向を比較すると、離職に至る前の予兆(残業時間の増加、評価面談での不満表明、有給取得率の低下など)を捕捉できる可能性がある。
入社からの経過月数別に離職率を見ると、オンボーディングの初期(入社後1〜3ヶ月)や試用期間満了前後に離職が集中している企業も多い。この場合は原因分析の焦点を採用時のミスマッチやオンボーディング設計に絞り込む。
分析結果を具体的な改善策に落とし込む
分析で優先度の高い原因が特定できたら、対策は「誰が」「いつまでに」「何をするか」まで具体化する。例えば「業務量の偏りによる負荷過多」が主因なら、36協定の範囲内での残業運用の見直しや業務分担の再設計、増員計画の検討といった実行可能な打ち手に落とす。
評価制度への不満が原因であれば、評価基準の明文化やフィードバック面談の頻度見直しなど、制度そのものに手を入れる。1つの原因に対策を1つずつ紐づけ、全社的な取り組みと現場のマネージャーが動く取り組みを分けて整理すると、実行段階での責任の所在が明確になる。
対策の効果を離職率で継続的に検証する
対策を実行したら、それで終わりにせず、翌四半期以降の離職率や退職理由の分布が変化したかを継続して追う。改善が見られない場合は、原因特定が的外れだったか、対策が現場で実行されていないかのいずれかを疑い、再度退職者アンケートや1on1の記録に戻って検証する。
離職の原因分析は一度きりの調査ではなく、退職理由の収集・分析・対策・検証を回し続ける定常業務として位置づけることで、属人化した勘に頼らない定着率改善につながっていく。
この記事のまとめ
- 退職面談は第三者が実施し、匿名アンケートを併用すると本音を集めやすい
- 退職理由は5〜8分類程度で定量化し、部署別・在籍年数別にクロス集計して傾向を見る
- なぜなぜ分析で表面的な理由の背後にある構造的な原因を掘り下げる
- 在職者のエンゲージメントデータと比較すると離職の予兆を早期に把握できる
- 対策は担当者と期限を明確にし、離職率の変化で効果を継続的に検証する