就業規則の届出は義務?従業員10人未満の会社が作るべき理由
2026年8月31日 公開 ・ 約6分で読めます
就業規則の届出義務は「常時10人以上」が基準です。10人未満なら法律上は不要ですが、実際には作成・届出しておいた方がよいケースが多くあります。本記事では届出義務の判定基準と、10人未満の会社が作成すべき理由を整理します。
就業規則の届出義務は「常時10人以上」がライン
労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出る義務があります。この「10人」には正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員など雇用形態を問わず、継続的に雇用している人が含まれます。繁忙期だけ一時的に10人を超える、といった場合は「常時」に当たらないと判断されることが一般的ですが、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。
なお「事業場」は会社単位ではなく、本社・支店・営業所など働く場所ごとに数えるのが原則です。本社が9人、支店が5人であれば、それぞれ10人未満のため合算しなければ届出義務は生じないケースもあります。ただし実務上は本社で就業規則を一本化し、全社員に適用する運用が一般的です。
作成義務と届出義務は別物という誤解に注意
「10人未満だから就業規則はいらない」と考える経営者は少なくありませんが、これは正確には「届出義務」がないだけです。就業規則そのものを作ること自体は、10人未満の会社にも制限はなく、いつでも自由に作成・運用できます。
逆に言えば、10人以上になった時点で慌てて作成しようとすると、労働条件の整理が追いつかず、記載内容に不備が出やすくなります。人数の節目を待たず、早い段階から整備しておく方が結果的に負担が小さくなります。
10人未満でも就業規則を作るべき理由
就業規則がないと、労働条件や服務規律が口頭や慣行のみで運用され、従業員ごとに解釈が食い違うトラブルの原因になります。特に懲戒処分や解雇は、就業規則に根拠規定がなければ有効に行えないとされており、無いこと自体が経営上のリスクになります。
また、母集団形成の段階で求職者が就業規則の有無を尋ねるケースも増えており、規程が整っている会社は労務管理がしっかりしている印象を与え、採用競争力にもつながります。試用期間中の解雇や本採用拒否の要件、休職・復職のルールなども、就業規則で明文化しておかないと個別対応がその都度ぶれやすくなります。
融資審査や取引先との与信調査、助成金の申請要件で就業規則の提出を求められる場面もあります。届出義務がない規模でも、対外的な信用の裏付けとして機能する点は見落とされがちです。
就業規則に最低限盛り込むべき事項
労働基準法第89条は、届出義務の有無にかかわらず、就業規則を作成する場合に記載すべき事項を定めています。始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払い方法、退職に関する事項(解雇の事由を含む)は「絶対的必要記載事項」とされ、必ず盛り込む必要があります。
退職手当、賞与、安全衛生、災害補償、表彰・制裁(懲戒)などは、定めをする場合に記載が必要な「相対的必要記載事項」です。特に懲戒規定は、後のトラブル対応に直結するため、10人未満であっても具体的な種類と事由を明記しておくことをおすすめします。
作成・届出の実務フロー
届出義務がある場合の基本的な流れは、(1)就業規則案の作成、(2)労働者代表からの意見聴取、(3)意見書の添付、(4)所轄の労働基準監督署への届出、(5)従業員への周知、の順です。労働者代表は、過半数労働組合がない場合、投票や挙手など民主的な方法で選出された過半数代表者である必要があり、会社が一方的に指名した代表者では手続きの有効性が問われる場合があります。
10人未満で届出義務がない場合も、意見聴取と周知は行っておくことが望ましいとされています。作成しただけで従業員に周知していない就業規則は、効力が争われる可能性があるためです。周知方法は、書面配付、見やすい場所への掲示、社内共有システムでの常時閲覧可能な状態などが認められています。
外部専門家の活用と改定管理
自社で作成する場合、厚生労働省が公表しているモデル就業規則をベースにする方法もありますが、業種特有の労働時間管理(変形労働時間制など)や36協定との整合性まで踏まえるなら、社会保険労務士に相談した方が手戻りが少なくなります。
就業規則は一度作って終わりではなく、法改正や労働条件の変更、オンボーディングの仕組み変更などに合わせて定期的な見直しが必要です。改定のたびに意見聴取・届出(該当する場合)・周知のプロセスを踏むことを、社内のルールとして決めておくと運用が属人化しません。
この記事のまとめ
- 就業規則の届出義務は「常時10人以上を使用する事業場」が基準で、雇用形態を問わず人数を合算する
- 10人未満でも作成義務や制限はなく、トラブル予防・採用競争力・対外信用の観点から作成しておく方が望ましい
- 始業・終業時刻、賃金、退職(解雇事由を含む)は絶対的必要記載事項として必ず盛り込む
- 懲戒・解雇を有効に行うには、根拠となる規定を就業規則に明記しておく必要がある
- 作成しただけでなく、労働者代表からの意見聴取と従業員への周知まで行って初めて実務上の効力が安定する