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雇用契約・労働法・コンプライアンス

従業員の自己都合退職の手続き|退職届の受理から離職票まで

2026年8月31日 公開 ・ 約7分で読めます

従業員から退職の申し出を受けてから、退職届の受理、有給消化・引き継ぎの調整、社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、離職票の交付までの一連の実務の流れと、各手続きの期限・注意点を整理して解説する。

退職の申し出を受けたときの初動対応

従業員から退職の意向を口頭で伝えられた段階では、まず退職理由と退職希望日を確認し、引き止めるかどうかを含めて早めに社内で方針を決める。民法627条1項では、期間の定めのない雇用契約は退職の意思表示から2週間経過すれば終了するとされているが、就業規則で「1か月前までに申し出る」等の規定を置いている会社が多く、実務ではこの就業規則の定めに沿って調整するのが一般的である。

口頭での申し出だけでは後日「言った・言わない」のトラブルになりやすいため、退職届(退職願)の提出を依頼し、退職日・最終出社日・有給休暇の消化予定を書面またはメールで確認しておくと、その後の手続きがスムーズに進む。

退職届の受理と退職日の確定

退職届を受理したら、退職日を確定させて本人・上長・人事の三者で共有する。退職日は「最終出社日」と「雇用契約上の退職日(社会保険・雇用保険の資格喪失日の基準になる日)」が異なるケースがあるため、両者を分けて記録しておくと後の手続きで混乱しない。

合意の上で退職日を前倒し・後ろ倒しする場合は、変更後の日付を書面(合意書や退職届の再提出)で残しておくことが望ましい。特にボーナス支給日や社会保険料の控除に関わる日をまたぐ調整では、給与計算や本人の手取り額に影響するため、事前に説明しておくとトラブルを避けやすい。

有給休暇の消化と引き継ぎの調整

退職前に残っている年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、業務都合を理由に一方的に拒否することはできない。最終出社日から退職日までの間で有給消化を希望する従業員は多いため、引き継ぎに必要な期間と有給消化期間を合わせてスケジュールを組む必要がある。

引き継ぎ資料の作成、取引先や社内関係者への連絡、業務の棚卸しは、最終出社日までに完了させるのが原則である。属人化していた業務ほど引き継ぎに時間がかかるため、退職の申し出を受けた時点で早めに引き継ぎ計画を立て、必要であれば一時的な応援体制やオンボーディング前提の後任配置も検討する。

貸与品の返却と誓約書の取り交わし

社員証、名刺、鍵、PC・スマートフォン、制服、社内システムのIDなど、会社が貸与していたものの返却リストをあらかじめ用意し、最終出社日にまとめて回収する。返却漏れが後から発覚すると、情報セキュリティ上のリスクや紛失時の責任所在で揉める原因になる。

業務上の秘密情報や顧客情報の取り扱いについては、退職時に秘密保持に関する誓約書を取り交わしておくと、退職後のトラブルを予防しやすい。競業避止義務を課す場合は、職種・期間・地域などの制限が合理的な範囲に収まっているかを確認し、過度に広い制限は無効と判断される場合があることに留意する。

社会保険・雇用保険の資格喪失手続き

健康保険・厚生年金保険については、退職日の翌日を資格喪失日として「健康保険・厚生年金保険資格喪失届」を年金事務所または加入している健康保険組合に提出する。提出期限は退職日の翌日から5日以内が原則であり、あわせて健康保険証を回収して返却する必要がある。

雇用保険については「雇用保険被保険者資格喪失届」を退職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出する。従業員が退職後に国民健康保険や任意継続被保険者制度、国民年金への切り替えを行う際に必要な書類となるため、提出が遅れると本人の手続きに支障が出る場合がある。

離職証明書の作成と離職票の交付

雇用保険被保険者資格喪失届と同時に「雇用保険被保険者離職証明書」を作成し、離職理由や賃金支払状況などを記載してハローワークに提出する。本人が離職票の交付を希望しない場合は離職証明書の提出を省略できるが、59歳以上の従業員については本人の希望にかかわらず提出が必要とされている。

ハローワークでの手続きが完了すると「雇用保険被保険者離職票(離職票-1・離職票-2)」が交付されるので、これを速やかに本人へ郵送または手渡しする。離職票は失業給付(基本手当)の受給手続きに必要な書類であり、交付が遅れると本人の給付開始が遅れる原因になるため、退職手続きの中でも特に期日管理を徹底したい項目である。

退職後に本人へ渡す書類一覧

離職票のほかに、源泉徴収票(所得税法上、退職後1か月以内の交付が求められる)、雇用保険被保険者証(会社が保管していた場合)、年金手帳や基礎年金番号通知書(会社保管分がある場合)を退職者に返却・交付する。転職先での手続きや年末調整に必要な書類が漏れていると、退職者から問い合わせが入りやすい。

退職金制度がある場合は、退職金の計算根拠と支給時期をあわせて案内する。書類の交付状況をチェックリスト化しておくと、担当者が変わっても対応漏れを防ぎやすく、退職手続き全体の属人化解消にもつながる。

この記事のまとめ

  • 退職の申し出を受けたら、退職理由・退職日・引き継ぎ計画を早めに本人と確認し、書面(退職届等)で記録に残す。
  • 有給休暇の消化は労働者の権利であり、引き継ぎ期間とあわせてスケジュールを組む必要がある。
  • 社会保険資格喪失届は退職日の翌日から5日以内、雇用保険資格喪失届は10日以内が提出期限の目安である。
  • 離職票は失業給付の受給に必要な書類であり、59歳以上は本人の希望にかかわらず離職証明書の提出が必要になる。
  • 貸与品の回収、誓約書の取り交わし、源泉徴収票など交付書類のチェックリスト化が、退職手続きの属人化解消につながる。

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よくある質問

退職届はいつまでに提出してもらえばよいですか。

民法上は退職の意思表示から2週間で雇用契約が終了しますが、就業規則で「1か月前までに申し出る」などの規定を設けている会社が多く、実務では就業規則の定めに沿って本人と調整するのが一般的です。ただし就業規則の規定は退職の自由を過度に制限するものであってはならない点に注意が必要です。

離職票はすべての退職者に発行するのですか。

本人が転職先が決まっている等の理由で離職票の交付を希望しない場合は、離職証明書の提出を省略できる場合があります。ただし59歳以上の退職者については、本人の希望にかかわらず離職証明書の提出とハローワークでの手続きが必要とされています。

雇用保険や社会保険の資格喪失手続きにはそれぞれ期限がありますか。

健康保険・厚生年金保険の資格喪失届は退職日の翌日から5日以内、雇用保険被保険者資格喪失届は退職日の翌日から10日以内に、それぞれ管轄の年金事務所・健康保険組合・ハローワークへ提出するのが原則です。提出が遅れると本人の各種手続きに支障が出る場合があるため、早めの準備が望まれます。

退職者の私物や貸与品の返却はどのように進めればよいですか。

社員証、鍵、PC、制服など貸与していたものの一覧をあらかじめ用意し、最終出社日にまとめて回収するのが実務上スムーズです。情報セキュリティに関わる貸与品(社内システムのID等)は特に返却・アカウント停止の漏れがないよう、チェックリストで管理することをおすすめします。

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