面接で聞いてはいけない質問|NG事例と適切な言い換え
2026年8月31日 公開 ・ 約7分で読めます
面接での不用意な質問は、就職差別につながるおそれがあるとして問題視されることがある。本記事では、避けるべき質問の具体例と、業務上の適性・能力の確認に焦点を当てた言い換え方、面接官への周知の進め方を実務目線で解説する。
なぜ「聞いてはいけない質問」が問題になるのか
面接での質問内容は、応募者の適性や能力を判断するためのものでなければならない。本籍地や家族構成、思想信条など本人の適性・能力と関係のない事項を尋ねることは、就職差別につながるおそれがあるとして、厚生労働省が公正な採用選考の考え方の中で注意を促している事項に該当する場合がある。
中小企業の採用担当者は、悪意なく世間話のつもりで踏み込んだ質問をしてしまうケースが多い。しかし応募者側がSNSや口コミサイトに面接内容を書き込む時代であり、不適切な質問は企業イメージの毀損や母集団形成そのものへの悪影響につながりかねない。まず「何を聞くと問題になりやすいか」を採用担当者全員で共有しておくことが実務上の出発点になる。
NGになりやすい質問カテゴリと具体例
厚生労働省が示す公正な採用選考の考え方では、本籍・出生地、家族の職業や収入・資産、住宅状況(持ち家か賃貸か等)、生活環境・家庭環境、思想・信条、支持政党、宗教、労働組合への加入状況・社会運動歴などは、本人の適性・能力と関係のない事項として質問を避けるべきとされている。「実家は持ち家ですか」「ご両親の仕事は」「支持している政党はありますか」といった質問は、この典型例にあたる。
性別に関わる質問にも注意が必要である。男女雇用機会均等法の趣旨に照らし、「結婚の予定はありますか」「お子さんが生まれたら仕事を続けますか」「妊娠・出産の予定は」といった質問は、女性にのみ実質的に不利益な判断材料として用いられるおそれがあり、性別を理由とする差別的取扱いと評価されるリスクがある。同様に、既婚・未婚や配偶者の有無だけを理由に評価を左右する運用も避けるべきである。
健康・障害・妊娠出産に関する質問の注意点
「持病はありますか」「メンタルの病歴は」といった健康状態全般に踏み込む質問は、業務遂行に直接関わらない範囲まで尋ねると、障害者雇用促進法や個人情報保護の観点から問題になりうる。健康状態を確認したい場合は、「業務内容Aを遂行するにあたり、配慮が必要な点はありますか」のように、当該職務の遂行可否に絞って尋ねる形が適切である。
健康診断結果の提出を選考の入り口段階で一律に求める運用も、応募者の適性・能力とは無関係な事項による選別につながりやすく、慎重な検討が必要である。健康情報を扱う場合は、内定後や採用決定後など必要な段階に限定し、取得目的を明確にした上で本人の同意を得る運用が望ましい。
適切な言い換え例(NG→OK)
「ご結婚の予定は」→「入社後、勤務地や勤務時間について配慮が必要な事情はありますか」。「お子さんが小さいようですが働けますか」→「勤務時間や休暇制度について、事前に確認しておきたい点はありますか」。「ご実家は太いですか(資産状況)」は質問自体が不要であり、削除する。
「持病はありますか」→「この職務に関連して、配慮してほしい健康上の事情があれば教えてください」。「支持政党はどこですか」「宗教は何ですか」は業務との関連性が説明できない限り、質問リストから外す。言い換えの共通点は、応募者の属性ではなく「職務遂行上の適性・能力」「本人が入社後に困らないための配慮確認」に焦点を当て直すことにある。
面接官への周知と質問シートの整備
現場の面接官が独自の判断で質問を追加してしまうと、担当者ごとに聞く内容がばらつき、リスクが再現する。採用担当が「聞いてよい質問」と「聞いてはいけない質問」を一覧化した質問シートを作成し、複数人が面接を担当する場合は事前に共有しておくと、属人化の解消にもつながる。
面接シートには、職務内容に直結する質問(経験、スキル、志望動機、入社可能時期など)を中心に据え、雑談として使う質問についても事前にリストを絞り込んでおくとよい。新任の面接官には、この質問シートを使ったロールプレイ形式の教育を実施しておくと、教育時間の短縮と質問リスクの低減を同時に図れる。
不適切な質問をしてしまった場合の対応
面接中に不適切と思われる質問をしてしまった、あるいは応募者から指摘を受けた場合は、その場で「申し訳ありません、この質問は撤回します」と率直に伝え、選考の評価には反映しない旨を明確にすることが望ましい。曖昧にごまかすより、誠実に対応した方が応募者の心証を大きく損なわずに済む場合がある。
組織としては、当該質問が出た経緯を採用担当内で共有し、質問シートの見直しや面接官への再周知につなげる。一度の事案を個人の問題として終わらせず、仕組みとして再発防止に落とし込むことが、継続的な採用活動の信頼性を守ることにつながる。
この記事のまとめ
- 本籍・家族状況・思想信条・支持政党・宗教など、本人の適性・能力と関係のない事項の質問は就職差別につながるおそれがあるため避ける
- 結婚・出産・健康状態に関する質問は、業務遂行上の必要性を説明できる範囲に絞り、属性そのものを評価材料にしない
- NG質問は「職務遂行上の配慮確認」という表現に言い換えることで、必要な情報を適切な形で聞き取れる
- 面接官ごとの質問のばらつきを防ぐため、質問シートを整備し複数の面接官に事前共有・教育する
- 不適切な質問をした場合はその場で撤回し評価に反映しない旨を伝え、組織として再発防止の仕組みに落とし込む